米国特許権付与件数が2年連続で増加
この記事投稿では、アナクアの特許分析ソフトウエア AcclaimIP(アクレイムIP)を用いたUSPTO(米国特許商標庁)の特許統計分析を解説しています。分析では、2023年12月1日から2024年11月30日までの期間においてUSPTO特許付与件数は前年の348,774件から5.7%増加し、368,597件に達したことが分かりました。これは2年連続の権利化件数の増加となり、この成長率は前年の成長より顕著であるものと考えられます。
データを詳しく見ると、米国企業が引き続きUSPTOからの特許付与件数でトップを維持し、157,955件の特許を取得しました。ただし、2023年の162,557件から2.8%減少しています。一方、アジア太平洋(APAC)地域の企業が引き続きUSPTO特許付与国の上位に名を連ねており、日本(44,656件、9%増)が2位、中国(38,775件、33.8%増)が3位、韓国(25,891件、7.6%増)が4位となりました。ドイツ(15,420件、10.9%増)は5位で、ヨーロッパ圏におけるUSPTOからの特許付与件数最多の国となりました。
また、2023年から2024年のUSPTO特許出願動向を分析した結果、大企業による出願が減少した一方で、大学・政府系研究機関・中小企業による出願数が横ばいであることが解析できました。特に、物理学・電気関連分野のUSPTO特許出願は減少し、VRや5G関連の特許は大幅に減少した形が見られました。この背景として、VR関連特許の減少にはAI関連技術分野への研究移行が影響し、5G特許の減少には6G技術への移行が影響していることが考えられます。
このような変化は、企業の技術投資の優先度が変化していることを示唆しており、新興技術へのシフトが特許権利化動向にも反映されていると考えられます。
特許付与件数にもとづいた最も革新的な企業
USPTO特許付与件数に基づいて革新的な企業トップ5 を解析したところ、サムスン電子が 10,427件の特許付与数で引き続き首位を維持しました。
2023年から2024年にかけて、サムスンの特許成長率が最も高かった5つの分野は以下の通りでした:
- マルチデバイス型有機発光半導体デバイス
- 電子データ処理インターフェース構成
- 複数の共通基板を持つ半導体配置
- 単一コンポーネントの有機発光半導体デバイス
- 非陰極線管回路制御配置
その他の革新的な企業トップ5 には以下の企業がラインクインしました:
- 台湾積体電路製造(TSMC):4,127件(前年比19.9%増)
- LGグループ:3,987件(前年比20.1%増)
- クアルコム(Qualcomm):3,474件(前年比9.8%減)
- アップル(Apple):3,437件(前年比17.8%増)
2024年のUSPTO特許権取得数の増加により、Appleがトップ5にランクインしました。特に、以下の分野で特許付与件数の増加が見られました。
- マルチユース型デジタル情報伝送経路技術
- 無線通信のローカルリソース管理
- 無線通信の監視・テスト技術
- その他の無線通信関連技術
特許付与件数に基づく主要技術分野
2024年におけるUSPTO特許付与件数の多い技術分野を分析したところ、半導体技術が3年連続で首位を維持しました。この分野のグローバルな技術革新は依然として活発であり、特許付与件数は 2021年の49,831件から2024年には67,118件へと増加しました(3年連続の成長)。この分野で最も多くの米国特許を取得した企業は以下の通りです:
- サムスン
- TSMC
- インテル(Intel)
- BOE(京東方科技集団)
- LGグループ
技術分野トップ5は、半導体技術、人工知能(AI)、医療関連技術、5G関連技術、バーチャルリアリティ(VR)となりました。
人工知能(AI)分野のUSPTO特許付与件数は4年連続で増加し、2020年の34,544件から2024年には54,022件へと成長しました。この分野で特許取得数の多かった企業は以下となりました:
- サムスン
- IBM
- Alphabet(Google)
- BOE(京東方科技集団)
- NEC
AI分野における主な技術革新領域は以下の通りです:
- バイオロジカル関連AI
- 機械学習AI
- 画像・動画認識AI
- シーン解析AI(画像・動画の特定要素に関するAI)
- 一般的な画像分析AI
医療関連特許は2023年の30,429件から2024年には53,648件へと76.3%増加し、主要技術分野の一つとしてランクインしました。この分野でUSPTO特許取得数の多かった企業は以下の通りです:
- メドトロニック(Medtronic)
- ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)
- Cilag AG
- ベクトン・ディッキンソン(Becton, Dickinson and Company)
- ボストン・サイエンティフィック(Boston Scientific)
医療分野における主な発明領域は以下の通りです:
- 診断・測定目的の個人識別技術
- 外科手術器具・デバイスおよび使用方法
- 有機活性成分を含む医薬品
- 抗がん剤(化学療法薬)
- 特殊製剤(ペレット、カプセル、固形剤など)
5G技術のUSPTO特許付与件数は2023年の55,263件から2024年には44,657件へと減少しましたが、特許付与数に基づく主要技術分野のトップ5 に留まりました。
この分野で特許取得数の多かった企業は以下の通りです:
- クアルコム(Qualcomm)
- サムスン(Samsung)
- ファーウェイ(Huawei)
- アップル(Apple)
- エリクソン(Ericsson)
5G分野における主な技術革新領域は以下の通りです:
- 無線ローカルリソース管理
- 複数同時利用の無線通信経路配置
- 無線通信ネットワーク設備
- 無線接続の管理・監視
- 無線ネットワークのモニタリング・テスト技術
バーチャルリアリティ(VR)技術は、2023年の57,252件から2024年には42,559件へとUSPTO特許付与件数が減少したものの、依然として主要技術分野のトップにランクインしました。この分野で特許取得数の多かった企業 は以下の通りです:
- サムスン(Samsung)
- デル(Dell)
- アップル(Apple)
- マイクロン(Micron)
- IBM
VR分野における主な技術革新領域は以下の通りです:
- VRとコンピュータのインターフェース技術
- VR制御ユニット技術
- VRデータ処理技術
- VRのエラーモニタリング・検出技術
- VR関連の光学要素・映像システム
最も革新的な大学ランキング
今年度も、最も革新的な大学の評価を行いました。2023年と比較するとランキングには大きな変動がありました。特に、サウジアラビアのKing Faisal University(2023年は36位)や、浙江大学(2023年は32位)のランクアップが注目されました。また、テキサス大学、スタンフォード大学、フロリダ大学、ミシガン大学 などの米国公立大学がトップ10入りしました。
Top 10 Assignees in 2024 | Number of Granted Patents 2024 | Number of Granted Patents 2023 | Position in 2023 |
---|---|---|---|
1. King Faisal University | 587 | 43 | 36 |
2. University Of California | 462 | 576 | 1 |
3. Zhejiang University | 268 | 46 | 32 |
4. Arizona State University | 249 | 153 | 4 |
5. Massachusetts Institute Of Technology (MIT) | 244 | 266 | 2 |
6. University Of Texas | 213 | 84 | 11 |
7. Purdue University | 194 | 204 | 3 |
8. Stanford University | 178 | 78 | 13 |
9. University Of Florida | 158 | 76 | 14 |
10. University Of Michigan | 138 | 66 | 17 |
まとめ
2024年のUSPTO特許付与件数の増加は、経済の不確実性が続く中でも企業が引き続きイノベーションに投資していることを示しています。特に半導体・AI分野における活発な特許取得は、今後も世界を変える技術革新が続いていくことを示唆していると考えられます。
執筆者:アナクア 分析ソリューション部門ディレクター、シェイン フィリップス(Shayne Phillips)
本レポートのデータは、USPTOの公開特許情報を活用した特許検索・分析ソフトウエアツールであるアナクアのAcclaimIPシステムによって分析されたものです。革新的な組織 (Innovative Companies) を決定するための指標には、2023年12月1日から2024年11月30日までの12カ月間に公開され、登録されたUSPTO特許出願数を使用しています。