アナクアの特許分析ソフトウェアAcclaimIPを使用した、米国特許商標庁(USPTO)特許統計の年次分析によると、米国の特許登録件数は2019年と2020年の2年間にわたって39万件を超えたものの、2020年12月1日から2021年11月30日までの期間を対象とした2021年の指標値は4%減少し、37万5,506件となりました。これは、2019年の39万2,616件、2020年の39万576件に対して、米国の特許登録件数が過去十年余りで急激に減少したことを示しています。
登録特許件数が減少した正確な理由を特定するのは困難ですが、その一因として、経済的にも行政管理的にも、コロナ禍が直接影響していることは想像できます。経済的要因が企業の知的財産予算を圧迫し、特許出願数の削減に影響した可能性がある一方で、人員についてはコロナ関連の欠勤や勤務条件の変化が、企業の特許中間処理手続きだけでなく、USPTOの審査スケジュールにも影響を与えた可能性が高いとみられます。
それでもなお、2021年には米国の特許登録件数が減少したにもかかわらず、諸外国からの出願登録件数を含む総登録件数は2019年以前の水準をかなり上回っています。このデータは、新型コロナウイルスの影響を受けている現在の世界に特有の課題にもかかわらず、発明に対する必要性はあるため、全世界の企業におけるイノベーションは依然として健全な水準にあることを示していると考えられます。
2021年の総米国特許登録件の内訳では米国(17万572件)が首位となっているものの、日本が2位(5万673件)、中国が3位(2万5,797件)、韓国が4位(2万4,094件)となり、今回もアジア太平洋地域の国が上位5カ国で優位を占めています。5位は欧州の主要国ドイツで、1万6,639件が登録されました。
特許出願件数から算出した最も革新的な企業を調査したところ、IBMが8,309件の特許を獲得し、長期にわたってリーダーとしての地位を守りました。最も革新的企業上位5社の残りはすべてアジアを本拠とする企業で、サムスン電子が2位(7,252件)、そして台湾積体電路製造(TSMC)(3,333件)、LGエレクトロニクス(3,196件)、キヤノン(3,163件)と続きます。
登録件数の多かったテクノロジー分野についての分析によると、トップ5は5G、バーチャルリアリティ、ワイヤレス通信、コンピュータによるユーザー入力の処理、そして半導体に関連するものでした。さらにその下には、プログラム制御ユニット、ネットワークセキュリティ、不正ユーザー検出技術が続いています。ランサムウェア、フィッシング、およびネットワーク攻撃の増加と高度化によって、世界最大手のソフトウェア、ハードウェア、およびコンピュータ関連のサービスプロバイダーが、後者のテクノロジー分野に注目するようになっていることは間違いありません。
また、私たちの分析は2020年初頭にコロナ禍が始まって以降、それに関連する案件が登録され始めたことを示しています。データへの反映には18カ月かかるため、通常では、これらのイノベーションはかなり後にならないと特許として登録されないと考えられます。そのため、発明者や組織は明らかに、USPTOの「COVID-19 Prioritized Examination Pilot Program (COVID-19優先審査パイロットプログラム)」を利用していることが考えられます。このプログラムは、新型コロナウイルス関連の発明の出願および中間処理を行う小規模企業を支援するために実施されたもので、出願審査プロセスを確実に迅速化することを保証しています。
私たちの分析からは、コロナ禍による前代未聞の課題にもかかわらず、世界の企業はそうした課題に対処し、複雑を極める課題を解決するために、驚くべき速さでイノベーションを続けていることが示されていると考えられます。
手法:本レポートのデータは、USPTOの公開特許情報を活用した特許検索・分析ソフトウェアツールである、AnaquaのAcclaimIPシステムによって分析されたものです。革新的な組織を決定するための指標には、2020年12月1日から2021年11月30日までの12カ月間に公開され、登録された特許出願数を使用しています。
執筆者 アナクア アナリティクスソリューションズ担当ディレクター 、シェーン・フィリップス