知財ポートフォリオの管理担当者そして知財弁護士にとって、知財ポートフォリオを効果的に管理し、競合分析を行い、社内チームや事務所と協力するための使いやすいツールを持つことは必要不可欠です。本ブログ記事の前編では、戦略的知財ポートフォリオ管理における重要な検討事項について紹介しました。
後編では、知財ポートフォリオをより効果的に管理する方法、そしてAQX®ポートフォリオ管理の主な機能について詳しく説明します。
AQXポートフォリオ管理
AQXのポートフォリオ管理機能は、アナクアのクライアント・ワーキンググループとの協力作業の中で開発されました。このグループが特定した一連のプロセス、要件、ベスト・プラクティスを基に、アナクアは業界全体に適用可能なポートフォリオ管理のフレームワークを構築しました。ポートフォリオの担当者は、知財が持つ競争優位性を最大化し、事業の戦略的価値を推進させる必要があります。そのためには、通常次のことが行われます。
1. 知財の保護
2. 知財ポートフォリオ戦略と事業目標の整合
3. ポートフォリオ開発・構築の推進
AQXポートフォリオ管理は、優れた分析機能を通して構造化された情報に基づいた意思決定を支援します。使いやすいダッシュボード、実用的なインテリジェンス(データから得られる情報・知見)、分析レポート、業務フロープロセスの自動化により、社内外の知財データ全体をシステムに統合しています。
図1: AQXホーム画面からポートフォリオ分析と優先タスクを直接表示
知財ポートフォリオの「見える化」
クライアント・ワーキンググループからのフィードバックによると、クライアントが必要としていた主な分野の1つは、テクノロジーと競合状況(コンペティター・ランドスケープ)を素早く把握し、情報に基づいた意思決定を行うための「見える化」、自由に組み換え可能な知財ポートフォリオ・ダッシュボードでした。
AQXポートフォリオ管理を使用すると、さまざまな方法でデータを簡単に細分化して次のように活用することが可能になります。
- 国別の知財支出データ、特許の付与と放棄、今後のアクションなど、重要なポートフォリオ指標のスナップショットを容易に閲覧
- 攻撃的レビューや防御的レビューなどの、知財レビュープロジェクトを追跡・管理
- 知財関連の収益化機会を容易に把握
- 内部KPIとビジネス・インテリジェンスをグローバルな観点で表示
図2: 動的でインタラクティブなHyperview™(ハイパービュー)ダッシュボードにより、グローバルなポートフォリオに関する重要な考察を提供
AQXでは、ポートフォリオレコードをリスト上またはワークス上の、2つの方法で表示することが出来ます。ポートフォリオ・ワークスペースからは、すべての資産についての関係性と包括的な詳細情報が提供され、ポートフォリオの価値を効率的に構築、管理、および評価することができるようになります。
アディダス社のグローバル・リーガル・イノベーション部門 バイスプレジデントであるクリストフ・ウォルパート氏は、AQXのダイナミックなダッシュボードについて次のように述べています。
「HyperView(ハイパービュー)は、私たちにとってアナクアを他の数ある知財分析ツールから差別化する重要な要素です。直感的に使用できるプラットフォームから、社内オペレーションと社外の知財状況に関する情報を、カスタマイズされた形で即座に閲覧することができます。ダッシュボード上のツールは色分けされているので、どこを見る必要があるのか、どこに注意を向ける必要があるのかを簡単に知ることもできます。スピード早く物事が進む時代に、大いに必要とされている機能であり、アドバンテージになる特長でもあります。」
知財ポートフォリオの評価
AQXを利用すると、AcclaimIP(アクレイムIP)が持つ業界最先端の分析機能を使った特許スコア、引用文献分析、クレーム分析、新規性・自明性に関する審査官拒絶通知などの、複数の指標を用いた特許ポートフォリオ分析が実施できるようになります。また、レーティング、分類、評価、およびレビューから収集した文書や主要データを活用することもできます。
AQXポートフォリオ管理が備えるワークスペース・ビューにより、知財担当者は次の機能を通じて評価を効率化できます。
1. 類似発明検索ワークスペース:関連技術リストを用いて、知財資産の新規性を評価します。
2. 初回登録判定ワークスペース:厳しい中間処理を経た後の知財資産の評価を更新します。
3. 発明検証ワークスペース:アイデアをさらに分析・精査し、ポートフォリオの中で最も価値のある特許を決定します。
4. ランドスケープ・メトリクス:定義された分類法を通して、競合状況(ランドスケープ)を評価します。
これら4つの知財ポートフォリオ評価方法の他に、顧客定義の基準によるメトリクスを使用して、スコア、強みまたは関連性インジケータを割り当て、知財資産を評価することもできます。
分析レポートを使用した情報に基づいた意思決定
知財ライフサイクル全体を通して、部門横断的なチームに働きかけ、多様な利害関係者と協力しながら仕事をする場合、十分な情報に基づく意思決定は困難で時間を要する作業になりえます。AQXの知財ポートフォリオ管理は、次の3つの主要な分析レポートで、知財担当者の意思決定を支援します。
1. 特許分析レポート(PAR – Patent Analysis Report):特許スコア、ファミリー、引用文献、拒絶理由通知、ランドスケープデータなどの主要な指標を使用して、知財資産のレーティングと評価を行うことを支援します。
2. 更新要否判断レポート(ADR – Annuity Decision Report™):特許スコア、引用文献、拒絶理由通知、権利帰属、分類内での年数、タイムラインなどの情報が含まれた社内外のデータの図表とインタラクティブなグラフが自動生成されたこのレポートにより、更新の要否判断が包括的な情報に基づいたものになることを支援します。
3. 中間処理レポート(PR – Prosecution Report):特許審査官、特許事務所、技術部門の過去の行動に関するデータや考察を示す図表および視覚化された情報を使用してスマートな中間処理戦略を立案、米国拒絶理由通知に対する有効な応答を分析・作成することを支援します。
定期的なポートフォリオレビューを実行する際には、AQXポートフォリオ管理により既存または新規の資産の重要性を、現在の事業との整合性、テクノロジー、商業化の可能性などのパラメータと容易に照らし合わせることができるようになります。
レビューを行いたい一連の特許を、特許および発明レコード内にある既存のポートフォリオの詳細とともに、シームレスに追加または削除できます。こうした定期的なポートフォリオレビューは、知財ポートフォリオを最新の状態に保ち、戦略的な事業目標と一致させるために欠かせません。
図3:ポートフォリオ・ワークスペースは、情報詳細やシステム統合された分析情報を閲覧して簡単にレビューを行うことができるスペースを提供しています。
知財関連支出と予算管理の改善
過去および将来の支出データを取得・分析することで、ポートフォリオの管理、中間処理および維持に関する意思決定をより多くの情報に基づいて行うことができるようになります。AQXのFinancial Management(費用管理)モジュールは、次のことを支援します。
- 知財ライフサイクルの各段階における費用予測
- 年間知財予算の管理
- 年金や社外事務所費用を含む知財ポートフォリオ支出の追跡
スムーズなでフレキシブルな知財資産の検索と分類
AQXの自由度の高い分類機能を利用することで、テクノロジーや事業単位など複数のベクトルで知財資産を簡単に分類・検索できます。また、コメント、追加日、追加のタスクフィールドなど、その他の検索条件を使用することもできます。こうして検索し選択した一連の特許は、任意の新規または既存の特許ポートフォリオに追加可能することも可能です。
知財ワークフローの自動化
知財チームは常に、可能な限り生産的で効果的であろうと努めています。AQXの業務フロー自動化機能により、知財担当者は次のことが可能になります。
1. 自動化されたアラート、通知、メールを使用してプロセスのさまざまな時点でチームメンバーと情報を共有することで、法定期限の徒過を防ぎます。
2. ダッシュボード、キュー、および意志決定ワークスペースの保留中アクションアイテムタブを使用することで、チームの反復的タスクにかかるリソースや時間を低減します。
3. レポートの生成、クエリの実行、または今後発行される拒絶理由通知のレビューに関する自動トリガーを使用してタスクを管理します。
最後に
AQXポートフォリオ管理は、必要なツールと情報を1ヶ所にまとめ、そこから検索やレポートの実行が可能な形で提供することで、知財ポートフォリオ管理を合理化することを支援しています。これにより、ポートフォリオ情報を活用して、知財ライフサイクル全体にわたる戦略的な意思決定を支援し、知財を活かしたビジネス成長を促進する支援を提供しています。
AQX 11:ビジネスの成長を知財で支援するためのプラットフォーム
AIや自動化を知財運営や管理に活用できるAQXの新バージョン【AQX 11】は、手作業に費やされる時間を削減し、知財ライフサイクル全体で必要となる意思決定のスピードを加速化するとともに、最適な判断を実行する支援を提供します。ビジネス資産としての知財の価値を最大化する進化したAQXで知財の可能性を引き出してみてください。